Joshua Ferris

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告白の場面で私と甲斐が現れなければ

告白の場面で私と甲斐が現れなければ、彼の気持ちも少しは報われていたかもしれない。「バカバカしい」「今、私のことバカって言った?」「言った。相変わらず、考えが極端だなって思わず鼻で笑っちゃったよ」久我さんは決して冗談を言っているわけでなはく、どうやら本気で私のことを救いようのないバカだと思ったようだ。「僕は君といて虚しいと感じたことなんて、一度もないよ。傷を舐め合うつもりもないし、ただこれからもたまに付き合ってほしいだけだからそんなに深く考えないで」「別に深く考えてはいないけど……」貨幣市場基金「一人で飲むより、二人で飲んだ方が楽しいだろ?」「……」その意見に本当は反対したかったけれど、私は小さく頷くことしか出来なかった。確かに久我さんといつもの店で飲むようになってから、私の飲みスタイルは少しずつ変わっていった。今までは、行きつけの店で一人でお酒を飲むことが仕事のストレス解消になっていた。それなのに、久我さんとたまに隣同士で飲むようになってからは、一人でいることに物足りなさを感じるようになっていたのだ。「……久我さんがそんなに言うなら、またこれからもたまにお酒付き合ってあげてもいいけど」「高飛車な答えが返ってくる方が、君らしくていいよね」「何よ、それ。またバカにしてるでしょ」「褒めてるんだよ」こうして私たちは、互いにムカつくことを言い合いながら札幌へと帰って行った。そして私の長年続いた恋は、この日ついに終わりを迎えたのだ。帰りの車中では、久我さんがイラつくことばかり言うせいで、意外と失恋の痛みを表に出すことはなく平気でいられる自分がいた。その後、依織と甲斐の交際が始まり、二人の交際は職場内でも広く知れ渡ることとなった。恐らく、青柳あたりが口を滑らせたのだろう。依織は、目立つことが嫌いなタイプだ。本当は周囲に気付かれることなく、ひっそりと交際したかったに違いないけれど、相手が甲斐だとそうはいかない。甲斐はその社交性の高さから、交遊関係が広く、全く関係ないような職種の職員とも繋がりがある。そのせいで、依織は嫌でも注目を浴びてしまうのだ。そんな居心地の悪い状況の中でも、最近の依織は笑顔を見せてくれることが多い。「依織、顔面ゆるゆるだね」「え、ゆるゆる?どういうこと?」「なんか、ずっと幸せオーラを振り撒いてる感じ」「ウソ、ヤバいね……」この日は依織と昼休憩の時間が被ったため、久し振りに二人で院内の食堂に繰り出した。
「あ、このチキン南蛮、意外と美味しい」「本当?一口ちょうだい。蘭も、こっちのハンバーグ食べていいよ」二人で定食のおかずをシェアしている間も、私は幸せそうに笑う依織を見つめていた。あのとき、積丹まで依織と久我さんの後を追いかけて良かったと心から思う。依織の笑顔を見られるのなら、もう何だっていい。それに、不思議と依織から甲斐の話を聞かされても、胸が痛むことはなかった。
少しずつ、諦めることが出来ているのだろうか。あと何ヵ月かすれば、完全に依織への恋心を失った私が存在しているのだろうか。正直、今はまだそこまで考えられない。それでも、きっと一歩ずつ、前に進めているはずだ。「甲斐と、うまくいってんだね。そのゆるゆるの顔見ればわかるわ」「……うん。今のところ、ケンカもなく楽しくやってる」恥じらいながら微笑む依織は、相変わらず綺麗だ。出会った頃から、ずっと変わらない。依織と食事を共にする時間が、私は好きだ。真正面から、依織のくるくる変わる表情を余すことなく観察出来るから。「ケンカしたら、教えてよ。私が仲裁してあげるから」「頼もしいね。ちゃんと私の味方してくれる?」「それはどうだろ。もし依織に非があれば、甲斐の味方しちゃうかもね」
2020-12-13 11:45:27, views: 96, Comments: 0
   
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